産業界で広く利用され、世界景気を判断できるとして「ドクターカッパー」の異名を持つ銅相場。その取引所在庫が積み上がっている。最大の需要国である中国の上海期貨交易所(SHFE)の指定倉庫在庫は4年振りの高水準だ。製造業が落ち込み、資金繰りが悪化したことで換金を目的に銅地金を在庫に入れる動きが広がった可能性がある。高水準の在庫が続けば相場には下押し圧力がかかりそうだ。
SHFEの指定倉庫在庫は、20日時点で37万7247トン。前週からわずかに減少したものの、直近で最も少なかった2019年12月上旬と比べると、3.3倍に膨れ上がっている。16年3月下旬以来の高水準だ。LME,COMEXを含めた主要3取引所の在庫の合計は約63万トン。前年同期に比べて32%増えた。
中国は製造業やインフラ向けを中心に、銅地金消費で世界全体の5割を占める。最大の消費国、中国で製造業の部品向け中間需要や製品など最終需要が大きく縮小した。
需要鈍化と工場の操業低下による資金繰り悪化で、トレーダーやメーカーなどが換金を目的に原料の銅地金をSHFE在庫に搬入している可能性が指摘されている。
前回、SHFE在庫が35万トンを超える高水準となったのは、中国が15年夏の株価暴落など「チャイナ・ショック」をひきずる16年のことだった。景況感の悪化による需要の減退などで在庫が積み上がった。今回は「コロナショック」に見舞われた格好だが、新型コロナによる混乱の収束は見えない。
銅など非鉄はメーカーの自社倉庫や取引所指定以外の一般倉庫にある「市中在庫」も相当ある。取引所在庫の増減だけで需給を測るのは困難な面もある。ただ、今後も取引所在庫が高水準で推移すれば市場は需給環境の悪さを想起せざるを得ない。取引所在庫の増加を無視できない局面に入った。取引所在庫の積み上がりが解消されない間は軟調な相場が続きそうだ。
<日本経済新聞 2020.3.26より>
最近では、在庫の大幅な増減でも相場に影響与える事が少なかったが、世界的な景気後退が広がれば在庫増減も相場変動に需要な要素となるんでしょうか。注目しておきたいと思います。